雨に濡れた自転車と引っ越し直後の新居

SETAGAYA ZEIKAI CENTER / 2026.09

仕事は決まった。引っ越しも終わった。けれど、新生活は最初から壊れかけていた。

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雨の引っ越しと、新生活の誤算。

介護職へ応募したはずが、採用通知には「カフェスタッフ」の文字。問い合わせによって誤記だと分かり、仕事の不安はひとまず解消した。しかし、大雨の引っ越し、写真とは違う新居、手で電池を押さえなければ使えないガスコンロ、給料日までの資金不足が次々に押し寄せる。これは、働き始めるまでの27日間をどうにかつなごうとする田中の記録である。

01

「カフェスタッフ」は、施設側のコピペミスだった。

介護職へ応募したにもかかわらず、採用通知には「カフェスタッフとしてお迎えします」と書かれていた。夜勤手当も介護職としてのキャリアも失うのではないか。田中は焦り、施設へ問い合わせた。

実際の採用職種は、介護スタッフ。

原因は施設側の文面のコピー&ペーストミスだった。仕事と生活の計画を根底から揺らした一文は、単純な誤記だったことが確認できた。田中はようやく胸を撫で下ろした。

02

中古で約1万円。洗濯機は10年目へ。

Xに投稿した古い洗濯機は、千葉に住んでいた頃に中古で約1万円で買ったものだった。隣家の解体工事で砂埃をかぶり、見た目はすっかり汚れている。

それでも10年間、一度も壊れずに動き続けている。引っ越しを繰り返す田中の暮らしの中で、この洗濯機だけは変わらず現役だ。

03

大雨予報の引っ越し。業者は予定より早く来た。

部屋の契約は7日、引っ越しは9日。天気予報は大雨だった。田中はAmazonで評価の高い2800円のレインコートを準備し、当日に備えた。

ところが引っ越し業者の到着は予定より早まった。慌てて残りの荷物をダンボールへ詰めた結果、洗面用具や洗濯バサミなど、必要な物まで捨ててしまった。

04

追加料金を避けるため、雨の中を一時間四十分。

トラックを待たせれば、追加の待機料金がかかるかもしれない。田中は寮から新居まで、自転車で一時間四十分の道を雨の中で走った。

荷物を搬入しても移動は終わらない。翌10日の朝には、ガス解約の立ち会いと寮の退去手続きがある。田中は再び同じ時間をかけ、自転車で寮へ戻った。

05

2800円のレインコート。一日で股下が破れた。

長い移動を終えて寮に着いたとき、買ったばかりのレインコートの股下が破れていることに気づいた。大雨の中で頼りにしていた雨具は、一日も持たなかった。

田中は怒りと落胆のままレインコートを捨てた。翌朝、寮の解約手続きでは清掃費3万円も支払う。新生活のために買った物と、旧生活を終えるための費用が重なっていく。

06

写真だけで決めた部屋。残っていたのはヤニと黒ずみ。

片道一時間四十分かかるため、田中は内覧をせず、掲載写真だけで新居を契約した。実際に入ってみると、換気扇にはヤニ汚れが残り、ユニットバスの黒ずみもひどかった。

退去時に自分の汚れとして清掃代を請求されないよう、入居から10日以内に写真と動画を撮影。傷や汚れの状態を管理会社へ報告し、証拠を残した。

07

電池を手で押さえながら、焼きそばを炒める。

新居のガスコンロは電池カバーがなく、下から手で電池を押さえていなければ火が消えてしまう。片手で電池を支え、もう片方の手でフライパンを動かすことになった。

自炊するだけで、なぜこんなに難しいのか。

焼きそば一つを作るにも、不便さと危うさが付きまとう。Uber Eatsをやめて食費を抑えたい田中にとって、壊れかけたコンロは新たな生活の壁になった。

08

昇給も加算手当もある。本人評価は「Sランク企業」。

新しい職場は当月払いで、初任給は10月下旬に約20万円が入る見込みだ。昇給や加算手当もあり、田中は条件を「Sランク企業」と評価している。

一方、通勤は自転車20分だった前職から大きく変わり、電車の乗り継ぎを含めて一時間以上になった。雇い入れ健康診断は自費、ユニフォーム代も3000円。働き始める前から出費が続く。

09

勤務開始まで27日。給料までは、さらに遠い。

新しい仕事は10月1日から始まる。配属されるフロアの人間関係や業務内容は、入ってみるまで分からない。田中はそれを「フロアガチャ」と呼び、前職のおつぼねとの苦い関係を思い返す。

交通費を払いながら、10月下旬の給料日まで生活をつながなければならない。光熱費は支払い、滞納は減らした。それでもWi-Fi代とスマホ代が残り、無職期間を作った重さを実感している。

10

7200円の箱で、一発逆転を狙う。

ポケモン30周年記念ボックスの抽選に当たり、7200円で購入できることになった。相場に十分な利益が乗れば未開封で売り、最低2万円以上の利益を狙う。

相場が上がらなければ箱を開け、一枚5万円以上になるレアカードに賭ける案もある。さらに、ポケモンセンター限定の2万7000円の「フューチャリスティックボックス」第3回抽選にも応募した。発送や出品に備え、メルカリの住所変更も必要になる。

11

超ブラックでも通った4万円。次は10万円枠を狙う。

資金繰りの頼みは、信用状態が悪くても審査に通ったという後払いサービス「ワンバンク」の4万円枠。セブン銀行から借りた50万円の返済実績もある。

その実績をもとに、田中は新たに「ナナコクレジット」へ申し込み、10万円の利用枠を得ようと考えている。仕事を始めるまでの生活費を、別の信用でつなぐ計画だ。

12

Uber Eatsは今日で終わり。壊れたコンロで自炊する。

年間契約は残っているが、Uber Eatsを使うのは今日で終わりにする。スーパーでは弁当や惣菜の売り場を避け、野菜や魚を買う。田中はそう宣言した。

食費は体の栄養になるから無駄ではない。一方、ゲームなどの嗜好品は無駄だというのが本人の考えだ。レインコートを一日で失った出費を反省し、働かなければ再び困窮すると自戒する。配信では、リスナーへボイスチェンジャーを使った参加も呼びかけた。

新生活の現在地。

  1. 新居を契約内覧なしで部屋を決める
  2. 大雨の引っ越し自転車で新居へ向かう
  3. 寮を退去ガス立ち会いと清掃費の支払い
  4. 介護職として入職新しい配属先で勤務開始
  5. 最初の給料約20万円を受け取る見込み

部屋は決まった。次は、生活を立て直す。

採用職種の誤解は解けた。雨の引っ越しも、寮の退去も終わった。残るのは、壊れかけた新居で給料日までをつなぎ、10月1日から介護職として働き始めることだ。

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