01
「カフェスタッフ」は、施設側のコピペミスだった。
介護職へ応募したにもかかわらず、採用通知には「カフェスタッフとしてお迎えします」と書かれていた。夜勤手当も介護職としてのキャリアも失うのではないか。田中は焦り、施設へ問い合わせた。
実際の採用職種は、介護スタッフ。
原因は施設側の文面のコピー&ペーストミスだった。仕事と生活の計画を根底から揺らした一文は、単純な誤記だったことが確認できた。田中はようやく胸を撫で下ろした。
02
中古で約1万円。洗濯機は10年目へ。
Xに投稿した古い洗濯機は、千葉に住んでいた頃に中古で約1万円で買ったものだった。隣家の解体工事で砂埃をかぶり、見た目はすっかり汚れている。
それでも10年間、一度も壊れずに動き続けている。引っ越しを繰り返す田中の暮らしの中で、この洗濯機だけは変わらず現役だ。
03
大雨予報の引っ越し。業者は予定より早く来た。
部屋の契約は7日、引っ越しは9日。天気予報は大雨だった。田中はAmazonで評価の高い2800円のレインコートを準備し、当日に備えた。
ところが引っ越し業者の到着は予定より早まった。慌てて残りの荷物をダンボールへ詰めた結果、洗面用具や洗濯バサミなど、必要な物まで捨ててしまった。
04
追加料金を避けるため、雨の中を一時間四十分。
トラックを待たせれば、追加の待機料金がかかるかもしれない。田中は寮から新居まで、自転車で一時間四十分の道を雨の中で走った。
荷物を搬入しても移動は終わらない。翌10日の朝には、ガス解約の立ち会いと寮の退去手続きがある。田中は再び同じ時間をかけ、自転車で寮へ戻った。
05
2800円のレインコート。一日で股下が破れた。
長い移動を終えて寮に着いたとき、買ったばかりのレインコートの股下が破れていることに気づいた。大雨の中で頼りにしていた雨具は、一日も持たなかった。
田中は怒りと落胆のままレインコートを捨てた。翌朝、寮の解約手続きでは清掃費3万円も支払う。新生活のために買った物と、旧生活を終えるための費用が重なっていく。
06
写真だけで決めた部屋。残っていたのはヤニと黒ずみ。
片道一時間四十分かかるため、田中は内覧をせず、掲載写真だけで新居を契約した。実際に入ってみると、換気扇にはヤニ汚れが残り、ユニットバスの黒ずみもひどかった。
退去時に自分の汚れとして清掃代を請求されないよう、入居から10日以内に写真と動画を撮影。傷や汚れの状態を管理会社へ報告し、証拠を残した。
07
電池を手で押さえながら、焼きそばを炒める。
新居のガスコンロは電池カバーがなく、下から手で電池を押さえていなければ火が消えてしまう。片手で電池を支え、もう片方の手でフライパンを動かすことになった。
自炊するだけで、なぜこんなに難しいのか。
焼きそば一つを作るにも、不便さと危うさが付きまとう。Uber Eatsをやめて食費を抑えたい田中にとって、壊れかけたコンロは新たな生活の壁になった。
08
昇給も加算手当もある。本人評価は「Sランク企業」。
新しい職場は当月払いで、初任給は10月下旬に約20万円が入る見込みだ。昇給や加算手当もあり、田中は条件を「Sランク企業」と評価している。
一方、通勤は自転車20分だった前職から大きく変わり、電車の乗り継ぎを含めて一時間以上になった。雇い入れ健康診断は自費、ユニフォーム代も3000円。働き始める前から出費が続く。
09
勤務開始まで27日。給料までは、さらに遠い。
新しい仕事は10月1日から始まる。配属されるフロアの人間関係や業務内容は、入ってみるまで分からない。田中はそれを「フロアガチャ」と呼び、前職のおつぼねとの苦い関係を思い返す。
交通費を払いながら、10月下旬の給料日まで生活をつながなければならない。光熱費は支払い、滞納は減らした。それでもWi-Fi代とスマホ代が残り、無職期間を作った重さを実感している。
10
7200円の箱で、一発逆転を狙う。
ポケモン30周年記念ボックスの抽選に当たり、7200円で購入できることになった。相場に十分な利益が乗れば未開封で売り、最低2万円以上の利益を狙う。
相場が上がらなければ箱を開け、一枚5万円以上になるレアカードに賭ける案もある。さらに、ポケモンセンター限定の2万7000円の「フューチャリスティックボックス」第3回抽選にも応募した。発送や出品に備え、メルカリの住所変更も必要になる。
11
超ブラックでも通った4万円。次は10万円枠を狙う。
資金繰りの頼みは、信用状態が悪くても審査に通ったという後払いサービス「ワンバンク」の4万円枠。セブン銀行から借りた50万円の返済実績もある。
その実績をもとに、田中は新たに「ナナコクレジット」へ申し込み、10万円の利用枠を得ようと考えている。仕事を始めるまでの生活費を、別の信用でつなぐ計画だ。
12
Uber Eatsは今日で終わり。壊れたコンロで自炊する。
年間契約は残っているが、Uber Eatsを使うのは今日で終わりにする。スーパーでは弁当や惣菜の売り場を避け、野菜や魚を買う。田中はそう宣言した。
食費は体の栄養になるから無駄ではない。一方、ゲームなどの嗜好品は無駄だというのが本人の考えだ。レインコートを一日で失った出費を反省し、働かなければ再び困窮すると自戒する。配信では、リスナーへボイスチェンジャーを使った参加も呼びかけた。